第三章

 個人の解釈もあるが、そこにあるのは『嬉しい』という見返り。

 違うのはそこに至るまでのプロセスと思惑。

「で、こっからが本題。かえでちゃん」

「は、はい」

「弟くんのこと、好き?」

「…………!」

「好き、なんだよね? しかもそれは、ライクじゃなくてラブの方だ」

「…………」

 沈黙は肯定。

「別にね、私はいいと思うよ。世間様は近親相姦だーつって嫌悪するんだろうけど、人間が都合の良い時に祈る神様なんて、みーんな近親相姦だからね。大事なのはそこじゃない。体(てい)じゃない。まあ、これは一旦おいといて。私も不本意ながら誠と同じで、かえでちゃんの気持ちを読むことなんてできないんだけど、身体の異変について心当たりがあってね。もう少し聞きたいことがあるから正直に答えてね」

「……それは、私がひいらぎを好きだということが前提の話、ですか?」

 そう尋ねたかえでの瞳孔は、心の内を言い当てられたからなのか、少し揺れていた。

 しかし杏子は、

「うん、そうだよ。というか前提もなにも好きなんでしょ? だって今回のことは、そうでなくちゃ説明ができない」

 きっぱりと言う。

「かえでちゃん。アナタは弟くんに若さを貢いでんだよ」

「え……どういう……?」

「理解しなくてもいいよ。これはもう事後のことなんだから」

 だから何も考えず、起きたことを覚えうる限り正確に教えてほしい。

「二月二日より前に、誰かにリンゴをもらわなかった?」