第二章
──それでも私は…………まあ、今回の件はちょっと特殊だけど。
「…………君の御両親が捜索願を警察に届け出ている」
誠の言葉にかえでは小さく頷く。
「君と君の弟と二人分の、ね」
今度は彼女から反応がない。
しかし誠はそんなことには一切構わないといった様子で話し続ける。
「…………その赤ん坊なんだろう? 君の弟。一歳違いの実弟・浜先ひいらぎ。彼もまた家出中で捜索中だ」
「…………」
「弟がいなくなったのも君と同日だ。君の話から推測するに、変化があったのは二月二日あたりからなのだろう。ただ、変化があったのは君だけじゃないだろう? 異変は他にもあったはずだ。君が老いていくのとは対照的に、弟はどんどん若返っていった」
「………………」
「沈黙は肯定と取る」
ぴしゃりと言い放つ。容赦がない。
「言っておくが俺は、情けをかけるために問答しているんじゃあない。今の状態がまるで君のためにならないから改善してやろうとしているんだ」
誠は、口は悪いが嘘は言わない。カマは掛けるが真実を語る。
それを知っているだけに、どれだけ厳しい物言いを誠がしようとも杏子が止めに入ることはない。
ふう、と。
かえでがゆっくりと大きく息を吐き出して顔を上げる。
「姉弟(私たち)の身に起きていること……全て龍崎さんの言う通りです。……龍崎さんは、人の心が読めるんですか……?」
「読めはしない。ただ、君たちの身に降りかかっている出来事に、少しだけ心当たりがあるだけだ」