四・五、灼熱


 四大『火』術。それがロビンに宿った力だ。「──………………ルド」四大は術者の精神に依存する心の力である。ヴァルハラに戻りたいと強く思えば至れるように、大地を穿つ剣が欲しいと思えば具現できるように。「──…………リ……ルド」感情を力に変換する。怒りの熱さだけロビンの焔は強大になる。まるで、感情そのものを具現化するように。「────ブリュン、ヒルドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


 瞬間、燃え盛る大火焔の中から焔を纏った怪鳥が飛び出した。燃え上る背にロビンを乗せ、波打つ焔の翼を振るい、大気を激震させながら滑るように空を駆ける。

 対するブリュンヒルドも雷で巨大な騎馬を創りだし、騎乗。走り出していた。

 彼我の距離は一瞬で無くなり、衝突。

 弾ける雷と燃え上る焔が激しく喰らい合う。それとは別に術者同士も闘争に及んでいた。

 ロビンが焔の拳を振り抜けばブリュンヒルドが雷槍を突き刺す。

 雷槍が身体を貫くたびに意識が飛びそうになった。だが、死ぬほどの痛みではない。苦しみでもない。

 ──倒れろ。

 自分の拳がぶつかるたびに肉が焦げる臭いがした。あと少し。手を休めるな。

 ──倒れろ。

 相手の得物は一つ。

 光速の槍術を使うが手数はこちらの方が上。押し負ける道理は──無い!

 その時だった。無意識にも相手の拍に合わせて繰り出した炎拳が雷槍を破壊。無防備となったブリュンヒルド。

 絶叫しながら叩き出した焔の弾幕が彼女の全てを捉えた。