本論三・バカと天才は紙一重だ。

 火球が射出。着弾。爆発。火の粉を受けながら熱風に煽られて、カネミツと介入者は互いに距離をとる。

 移動ではなく姿勢維持に全神経を傾け、カネミツはまず自分の体を確認した。火の粉を浴びたケープから、薄く煙が立ちのぼっている。小さな火種が生まれかかっているところだった。

 もはや防寒具など必要ない。カネミツはケープを脱ぎ捨てて箒の上から踏みつけ、適当に鎮火すると、今度は介入者へ目を向けた。

 発砲時、両者の距離はライフルには近すぎた。外しようはないが、着弾点の真横には頭がある。

 確かに何度か殺されかけているが、カネミツ自身に介入者を殺すつもりは全くない。そもそも、〈ワシリーサのしるべ〉の暴走状態さえ解除すれば勝手に死ぬ相手だ。

 果たして、介入者はいまだ両足で地面を踏みしめていた。

 右肩に貼りついていた頭蓋骨は破壊され、介入者の肉の色が見えるようになっている。

 とはいえ、無事とは言い難い。火を内包した頭蓋骨が貼りつき、その上で火球が炸裂した右肩は、ひどい火傷を負っているように見えた。

「火傷で死ぬんじゃねぇだろうな……」

 カネミツは火を操る魔法を扱っている。火傷についての知識なら、細かい数字は覚えていなくてもそれなりに身についているし、身にしみている。

 体の広い範囲に火傷を負った場合、体内の水分が失われてショック症状を起こす。

 そうならないためには適切な処置を、迅速に施さなければならないのだが、

「……あと二つか」

 障壁となるのは、介入者に貼りついた防衛機構だった。