本論二・若気の至りにも限度はある。

 撃鉄に叩かれ、薬莢内で火薬が炸裂。銃身内部に刻まれた炎の象徴がさらに火力を上乗せし、球形に整えられて銃口から射出される。

 先ほどまでの簡易魔法とは比べるべくもない。

 白壁に命中した火球はその場でさらに爆発し、頭蓋骨をまとめて吹き飛ばす。着弾地点にあったミニチュアは粉も残さず、周囲にいたものも小さな欠片となって辺りにまき散らされた。

 骨片と火の粉をかき乱し、爆炎渦巻く風穴をカネミツとオキツグが通過する。

 開ける視界。小さな草原と、地下都市ワシリーサの外壁が広がる。

 ライジング・フリーの翼が消え、速度が大幅に減衰。元の速度である時速八〇キロに戻ったのは、白壁を抜けた直後のことだった。

「……よく、止まらなかったな」

 半ば呆れ、半ば感心して、カネミツが言う。

 緊張と集中のせいか、鼓動は今更のようにハイテンポで血液を巡らせていた。耳の裏側に心臓があるような、けれど不快に感じない騒がしさ。生きているという感覚を、ぼんやりと意識させてくれる音だった。

 対するオキツグは、さらりと、当然のように。

「前は任せたと言っただろう」

「そういうバカ正直さは信頼できるところだよ……」

 爆発の衝撃を逃れた頭蓋骨たちが今更のように追走しようとするのも無視して、二人は草原へ突入。

 入り組んだ道も、障害になる物資もない。あとはひたすらに加速して、ワシリーサの外壁に辿りつけばいい。

 はずだったのだが。

「……いる」

「は? なんか言っ──」