第四章

「ペストが怖いの? 浅間を守りたいの? 死にたくない? 別にどれでもいいけど、そんなにハイジアにペストを倒してもらいたいんだったら、ちゃんと作ればよかったのに」

 分からない。

 わざと低いスペックのハイジアを作っておきながら、前線に送り出す理由が。

 意図的に作った失敗作に、すんなり自分の命を預ける神経が。

「私はちゃんと働いてきた。でも、ペストを倒したくらいじゃあ、誰も私のことを認めてくれない。今回の一匹だって同じでしょ。私が出るときなんて、大抵は塔の近くまでペストが接近したときで、今の状況と大して変わらない。私が出なければ浅間にダメージがあったかもしれないのに、私の扱いは失敗作のままじゃない」

 御堂が苦々しく表情を歪めるのを、ヴィオレは妙に凪いだ心で見つめていた。

 達観していると言ってもいい。ヴィオレが欲しかったものは、もう手に入らない。拠り所のないヴィオレが生きていてもいいのだと思えた可能性は、もうどこにもない。

 ヴィオレにとって封印計画は、それほど大きいものだった。自分が生きていてもいいと思うために、誰も知らないところで仮死状態になる。どこに問題があるだろうか。ただ生きているだけでは認められないのだから、役に立てるただひとつの方法を実行しなければいけなかったのだ。

 その可能性を、御堂とレゾンは奪った。彼らはヴィオレに優しくしてくれたかもしれないが、対価として払った他者からの扱いはあまりに大きすぎる。

「ちゃんと作らなかったのに、まだ私にはちゃんと働けって言うの?」