終章 始まりは終わりと共に

「え? ガーマルさんのお宅じゃない? っかしーな……すんませーん家違いでした」

 金髪の男は家屋手前に配置してある階段を軽やかに降りて──イアンと目が合った。

 数瞬の沈黙の後、男はイアンとティアのいる椅子に歩み寄って片手に持った荷物を静かに置く。そしてポケットから札を二、三枚取り出して、イアンにそれを突きつけて言う。

「元気そうじゃねーかイアンくぅん」

 リッキーだった。

 首筋のマフラーでは隠しきれない位置に、幼女の首筋にあるものと同形の魔法陣が伺える。

 イアンはそれを見てから突き付けられた札に目を落として言う。

「お互い様だ。というかなんだこれは? 新手のカツアゲ撒き餌か?」

「違っ、ああもうテメ、せっかく俺が借金の返済に励んでるっつうのに!」

「……は?」

「あんだよ?」

「よく聞こえなかった。もう一回言ってくれ」

「だから、借金の返済だっつってんの!」

 それを聞いてイアンが哀しみの表情を浮かべる。

「な、ん、で、可哀想な者を見るような目を俺に向けちゃってんの!?」

「お前は脳筋ではない。お前はただの労働者に成り下がった」

「あんだとこのヤローやんのかテメエああん!」

「上 等 だ」

 乱闘勃発二秒前。

 周囲の住民は至急、速やかに非難を。できるだけ遠くへ、もしくは南門の門番を呼んで来てください。──そんな街内通達が飛び交いそうなほどの緊急事態。見晴らしのいい小奇麗な高台の一角でリッキーとイアンがメンチを切り合う。

「ねえ、リッキー」

 そんな中、ティアは言う。

 戦闘状態を解除しないまま、首だけこちらに向けるリッキーに向かって。

 花が咲いたような、可愛らしい笑顔で。

「助けてくれて、ありがとう」