第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 小さな身体から伝う鼓動が速い。上下運動を繰り返す胸。息切れが激しかった。時折顔にかかる吐息が熱かった。

 そして、幼女の背中からは大量の血が滴っていた。

 背中に当てた手指の間をぬめりとした感触の赤が通過していく。

「何が、どうなってんだよ」

 困惑気味にリッキーが問うても幼女から返答はない。

 半開きの目が虚ろに濁って光を失っている。幼女の意識は混濁しているらしかった。しかしそれでも幼女はたどたどしく、答えにならない言葉を紡いだ。

「……タ、すけ テ」

 胸が、ざわつく。

 ──…………まただ。

 リッキーは胸中でぼそりと呟く。

 正直な話、リッキーはティアの事をよく知らない。

 知っていることがあるとすれば、相手の事を考えない早朝訪問という横暴な行動を敢行してしまう問題精霊ということぐらいだ。六日程度顔を突き合わせたくらいで明確な付き合いもないし、助ける義理はない。

 しかし、この衰弱した姿を目の当たりにして見捨てることができるのか。

 不意に──ガシャリ、と。

 ガラス片が潰れるような音がした。

 その時、リッキーは気付いた。

 裏道の奥。

 太陽の光すら遮られた裏道の奥の奥で揺らめく無数の青白い火を。その火が、肉の無い骸が双眸に宿った瞳だという事を。

 そして、その骸骨たちが足音もなくゆらりゆらりとにじり寄って来ているという事を。

 呆けるリッキー。声も出なかった。

 次の瞬間、骸骨たちがリッキー目掛け一斉に飛びかかり──