第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 というか、商売人なら泣き落としなんて卑怯な真似はするなとも思ったが、更に面倒な事になりそうなので口には出さない。しかし、だんまり決め込んでいても男の口は留まることを知らず、どんどん饒舌になっていく。

 そしてようやく泣き落としパターンの終盤を迎えたのだろう。東方風の男はリッキーの肩から手を離し、大きく広げて締めくくる。いや、締めくくろうとした時だった。

 ドン、と。

 唐突に爆発音が響き渡った。

 人通りの流れが止まる。

 リッキーは周囲を見回して発生源を探る。少なくとも、広場やそこに繋がる大きな通りではないようだった。しかし音は近い。

 催し物で花火でも上げているのかもしれないとも思ったが、違った。

 再び、空気を揺さぶるような爆音が鳴り響くと同時、今度は赤黒い爆煙が立ち上った。方向は東方風の男の背後。建物と建物の間にある小汚い裏道である。

 通りで悲鳴を上げながら右往左往する人々を余所に、東方風の男を横に払ってリッキーは音の発生源である裏道に足を踏み入れた。

 何故だか無意識に急いてしまう足が掴む裏道は、住人によって不法投棄されたゴミや廃材が散らばる悪路。もとより、建物と建物の間にあるスペースであるから道と呼べるような代物ではなかった。

 そんな裏道の半ばで、リッキーは駆けていた足をはたと止めた。

 目に留まったからだ。

 桃色の髪をした露出多めの格好の幼女──もといクルスティアン・ポポリオーネがボロ雑巾のようにその身体をくたりと横たえているのを。

「お前……!」

 リッキーは駆け寄って幼女を抱き起す。