〇〇八

 二日目の作業終了後、シルベスタとロニは街に足を運んでいた。

 昨日に引き続いて失踪事件の聴取をするためである。

 二人はまず、バフォメールを目撃した住民の元を訪れた。

 山羊がその後どうなったのか聴取したが、結局、軍部が引き取り野に放ったという経緯しか分からず、二人はすぐにその場を後にした。

 日中の作業がハードなものだったせいかロニの挙動がのっそりしている。シルベスタはといえばまるで通常通りで、歩いては途中振り返ってロニがはぐれず付いてきているか確認を繰り返す。

「次はどこに行くんだ?」

 シルベスタが首だけ動かして後ろを見ながらロニに尋ねる。

 しかしロニは既にベンチに座っていて、くたりと脱力していた。

「上官殿、すこし座りません?」

 急いでもろくなことはないですぜ、とロニは続けて言うが、ただ単純に休みたいだけなのが伝わってくる。

「まあまあ、座りなすって。作戦会議でもしましょう」

「作戦会議?」

 言われてシルベスタは、半信半疑でベンチに座る。

「まさか会議っていうのは、俺が一方的に意見を出すとかそんなんじゃないだろうな?」

「そんな事ないっすよ。こちとらちゃんと考えてますって」

「ほう。聞こう」

「へい。まず、これ」

 言ってロニはパーカーの帽子から書類の山を掴み出してベンチに叩き付ける。

 パーカーの帽子に収まるような量ではないそれは、ロニが報告書に添付していた失踪事件の捜査資料だ。

「失踪者のお宅を一軒一軒回るのは大事なことですが、残念なことに独り身が多い」

 捜査資料を見ながらシルベスタはそのことを理解する。