二、アルヴィンス・ガザの導き
本来四大は主神オーディンが子である戦乙女に与えるもの。しかし四大というのは世界を形作る要素。いわば、普遍的に自然的に、造作もなくその辺りに転がっているものでもあるのだ。
四大はその性質上、何かを核に収束する。
それは例えば古めかしい道具であったり、気の流れが溜まり易い場所であったりと形は様々だが、稀に、大きな感情を持った心に収束する場合がある。
怒り、悲しみ、憎しみ、喜び。
もしも戦乙女以外の者が四大を授かるとすれば、その一点。
だが、その条件を持ってしかも人間にとって死後の世界であるヴァルハラで二度目の生を受けるとなると、その人間の存在価値はもはや人以上のもの──もしくは人外と評しても間違えではない。
ヴァルハラで二度目の生を受けるには、通例、二つの条件を満たさなければならない。
一つ、帰天の過程で主神の加護を受けなければならない。
加護の授受。これは、きたる『神々の黄昏』に備えて集められた戦士たちを管理するための採番処理のようなものだ。加護というのも名ばかりで、実際には主神の四大の末端に触れさせる事で戦士たちを洗脳するためだけの作業である。
そしてもう一つ、戦乙女の手で死した者は蘇生の対象とする事ができない。
基本的に戦乙女たちは戦士の収集において自らが人間に手を下す事はできない。
ただし、主神の加護を受ける事ができない者(既に四大を保有している個体)は洗脳ができず、反乱分子と成りうるため、排除しても構わないという特例が存在する。