一、ロビン・ウォルタナの後悔
単なる**********の*で。
──認めない
聡明で綺麗だった***とは別の。
──認めない
透き通るような*は、もう永遠に。
──認めない
僕はブリュンヒルドが住まうという天空に一番近い山に登った。道は険しかった。だが、体中を駆け巡る憤怒が僕を駆り立てた。そして頂上に到達し、僕は彼女と相見えた。
対峙した瞬間、体中の血がざわつき、自分の身体が更に高熱を帯びていくのが分かった。
僕の姿を見、驚愕する彼女の表情が印象的だったが雌雄は一撃の下に決した。
雷光。
戦乙女ブリュンヒルドが扱う神速の槍が僕の心臓を穿ったのだ。
胸部を抉られた直後の記憶は曖昧だが、魂の奥底に灯った業炎は、消えはしない。
──殺してやる。
それが、僕が一度目の最期に放った言葉だ。
他の誰にでもなく、ニーナ姫を殺した張本人へ──たった一人の妹を殺害したブリュンヒルドへ向けて。
妹には確かに、生まれ持った不思議な力があった。
ニーナが歌えば動物たちはまるで仲間であるかのように寄り添い、負傷した者に手をかざせば瞬く間に傷が治癒していった。微笑めば誰しもが笑顔になったし、そばにいるだけで心が安らいでいった。
しかしニーナも人間だ。
国の政治に頭を悩ます事もあれば、戦死者の墓前で自分の不甲斐無さに打ちひしがれている事もあった。国を治める自分がもっとしっかりしていれば、と。