一、ロビン・ウォルタナの後悔
『隣室に人が入るのは久しぶりだ。しかも己れの声を聞く事ができるか。長年独りで退屈していたところだ。少し話し相手になって欲しいのだが』
その申し出に対し、僕は深く考えず頷いて答えた。
声で応えて構わないと言われた事を思い出し、口を開こうとしたのだが、隣室の人物はまるで僕の行動が視えているかのように──いや、語弊がある。視えているからこそ的確な指摘ができるのだろう。『普段通りでいい』と促し、低い声で僕に問うた。
『お前の最期は、どんな死様だった?』
◇・◇・◇
僕は死んだ。
比喩でも何でもなく。ただ事実として。
……あと少しだった。
ふざけた絵空事から救う事ができたはずなのに。
たった一人の肉親を守る事ができたはずなのに。
全ては、ブリュンヒルドと言う名の女の登場から狂い始めた。
彼女は言った。
戦乙女という自身の立場上、これより先に起こりうる『神々の黄昏』に勝利するためには女神の覚醒を促す必要がある。したがって、カサドレア国のニーナ姫の魂を拘束する。と──
言っている意味が理解できなかった。
『神々の黄昏』とは何なのか。
女神とは何なのか。
ただ、これだけは分かる。彼女は利己的な思想の下、ニーナ姫の命を奪おうとしているのだと。
そしてそれは、無情にも遂行された。
僕の目の前で。眼前で。目下。鮮血に塗れた。肢体。寸断。
それはもはや***ではなく。 面影も香りも****も消え失せ。