六、存在意義
中距離の副兵装──小型電磁加速ユニットによるレールガンという手段もあるが、これは牽制的な意味でしか使えない。弾も少ない。
それでも。
──飛び、続けろ!!
悔しい。
追いつけないことが、悔しい。
率直に、蒼衣はそう思った。
それは、ずっと昔に捨てたはずの感情だった。
ドラゴン・フライになる際、いらないからと捨てた余計なものだった。
不意に、全方位を捉えている視界の中に何かが映った。それは地上から空へ向かって高速で伸びる煙。飛行機雲にも似た真っ白な煙。
突如として入る通信に、蒼衣は一拍遅れて応じた。
コクピット前面の左下に通信相手の映像が映し出される。
『──蒼衣姉ちゃん!』
「鋼介!?」
『横、見える!?』
言われて蒼衣は、全方位の視界の中に映る白い機体を発見する。黒銀ではない、白い人型機体を。コクピットには鋼介が乗り込んでいるらしい。しかしその全容が掴めない。
『姉ちゃん、聞いて』
コクピット前面左下に映し出される鋼介は、傷だらけだった。
『ブラン・エフェメラルは、単機じゃないんだ。二つあるんだ。二機で一対なんだよ!』
鋼介は言う。考えてもみろ、と。
人型機体ではないブラン・エフェメラル。しかしその正当後続機であるオニキス・ライトは、人型機体だった。正当後続機とは、なにも名だけの話ではない。名は体を表す。ならば、先代機であるブラン・エフェメラルにも、人型形状があると考えるのは至極真っ当なことではないか。
『──そうだよ、蒼衣!』
ヴン。と今度はコクピット前面左上に綾乃の顔が映し出される。