第4章
驚きよりも、申し訳ないという気持ちが大きい。しかし、本当にそれでいいのかと問う僕に、「趣味みたいなものですから」と笑って答えたヴァージルには有無を言わせない力があった。
真意は読めない。知りたいとは思うのだが、問いただす気にもなれない。
「あぁ、ぴったりですね。ありがとうございます」
封筒の中身を数え終わったヴァージルが、視線を上げた。
薄い茶封筒がヴァージルの懐に入ると同時、ちょうどよく頼んでいたコーヒーが運ばれてくる。ウェイターが去ったあと、ヴァージルはどうしてだか困ったような顔をした。
「これに毎回困ってしまうんですよね。支払いが終わったら、すぐに帰ろうと思うんですけれど」
なぜ、と問う必要もない。
ヴァージルは、できるだけ依頼人と関わらないようにしている。狙撃地点に証拠が残るよう、鉄塔の上で寝泊まりしていたのと同じだ。
犯人は自分である、と大声で主張するのではない。依頼人が犯人だと疑われないように、できる限りのことをしている印象だ。
やはり、被虐趣味に見える。復讐代行と名乗って家を周り、仕事が入れば殺人の罪を被り、しかも報酬は驚くほど少ない。これで「趣味」と言い張るなど、第一印象よりもよほど変質者だ。
なにか目的があるのではないか。
何気なく問うと、ヴァージルは少し考えてから肩をすくめ、コーヒーを口に含んだ。
「面白くない話ですよ」
そう断って、服の下に隠していたペンダントを外した。金具を取り付けられた実包がぶら下がっている。底には、あの肉塊のように光る石がはめ込んであった。