第4章
ひどく現実味がなかった。
薄い新聞紙に目を落とすと、何度見ても同じ見出しが躍っている。
──退院のグレッグ・ブリューが殺害される
──潰れていない弾丸の謎
細々とした文字で書かれた本文を見れば、これは新聞記事というよりも、うさんくさい週刊誌の都市伝説特集に似た雰囲気があった。
狙撃位置は現場から離れた鉄塔の上とされているが、残された弾丸は拳銃に使用するもの。通常、命中すれば潰れる弾丸が、薬莢から飛び出したままの姿で発見される。近くにいた職人三名にけがはなし──
僕が引き金を引いた事件だというのに、読んでいるだけで苦笑が浮かんでくる。実際、同じ事件を伝えた報道機関には、問い合わせが殺到しているらしい。伝え聞いた話では、近く警察が直々に正式発表をする事態にまで発展しているようだった。
大変そうだ、と他人事のように思う。
それを言ったら、ある程度の証拠は残してしまっているであろうヴァージルも、大変なのだろうが。
「お待たせしました」
意識を向けた途端、穏やかな口調が耳に滑り込んできた。
いつもの微笑を浮かべたヴァージルが、向かいの席に座る。僕は広げた新聞紙をたたみ、ヴァージルがウェイターに注文するのを待って鞄を取り出した。
僕の家からそう離れていない、オープンカフェ。そこが、ヴァージルの指定した報酬支払いの場所だった。
取り出した封筒は、自分でも驚くほどに薄い。ヴァージルが提示した金額は、学生が一ヶ月もバイトすれば集まる程度のものだったのだ。