第3章
電話越しに指定された場所へ向かうと、先に到着していたヴァージルが地面に腰かけて待っていた。
市街地から少し離れた、小高い山の中。鬱蒼と茂る木々の中に直立する、木々よりも高い鉄塔の根本だ。ヴァージルから指定された通り、帽子と手袋を着用してきたのだが、この姿で近づくのは少しばかり怪しいのではないかと思えてくる。
僕に気づき、薄く笑みを浮かべたヴァージルは、ゆったりと立ち上がると「立ち入り禁止」の看板を無視して金網の扉を開ける。
遠方にある発電所と、僕の住む町を繋ぐ高圧電線が渡されている鉄塔だ。もちろん、抵抗はある。禁止されているから、というよりも、危険すぎるという意味で。
「大丈夫ですよ。危ないところは適当に処理しましたから」
それとも、と言葉を区切る。
「弾丸だけおいて、引き返しますか? 仕事の成功は、新聞か、例の警官が教えてくださるでしょう?」
ヴァージルの進言に、僕は咄嗟に首を振っていた。考えた結果ではない。もう、心に決めておいたことなのだ。
──僕が撃っても、グレッグ・ブリューを殺せるだろうか。
電話で問うた僕に、笑って肯定したのは他でもないヴァージルだ。
むしろ、その方が成功しやすくなるとまで言われている。射撃が下手なことも伝えたのだが、それこそ一笑にふされた。
ヴァージルに導かれるまま、鉄塔の内側に取り付けられた階段を登る。エレベーターなどという気のきいたものはない。息が切れそうだなと、ぼんやり思う。
「自らの手で撃ちたい、ということですので、少し詳しい話をしましょうか」