恋というには冷めていて、友情というには難があった。 私はずっと、「返却期限」を抱えていた。 本屋独特の、薄い形状のビニール袋。色は濃紺。 店名は、故郷でよく見たなじみのもの。 中には、借りた本が入っている。 高校生の頃から、本を貸し合うだけの仲だった。 卒業と共に自然消滅しそうな仲。 けれども、彼はその関係を、どうしても続けたいらしい。 そうして私は、ずっと「返却期限」を抱えている。
Writer - 射月アキラ 完結 / 純文学