目が覚めたら

「おう、おう、エル坊や無理をしてはいかんと言ったろーに」

 カールさん早すぎるご到着だ。カバンを置くとすぐに俺の診察をしてくる。

 熱はないの、瞳孔もしっかりしておる、痣は……綺麗に消えとる」

 診察はいたってシンプルだった。魔法で癒してくるのかと思ったんだが、そんなことはしてこない。

「体調が良くなって動きたいのはわからんでもないが肝心の体力がないんじゃ、1人で動こうとするでないぞ? エル坊の両親も心配するでな」

 恐い見た目に似合わない優しい口調、優しい目、優しい診察。カールさんが聖者と今、納得した。

「明後日から儂は王国に行くでな、体調を悪くしても見てやれんぞ? 歩き回りたいなら誰かに付き添ってもらいなさい」

 カールさんの苦言に頷くしかない。

 カールさんもそうだが、両親も心配してくれているのだ、無理はしないようにしよう。

 無理をして死んでしまったらたぶん、もうチャンスは無い。これはチャンスなんだ。

 俺は、この世界を生きてみたい。

 前世はなんで死んだのかもわかららないが、生きてる間なんて、なんで生きてるのかわからなかった。

 人生をやり直したいとなんども思った。

 最初は混乱したが、たぶん、だからこれはチャンスなんだ。

 願いが叶った、チャンスなんだ。