第三章

 翌日、夕刻。

 世界を赤く染め上げていた太陽の勢力は、だんだんと衰えて西に追いやられていた。辺りはゆっくりと、しかし確実に闇にのまれていく。夜の訪れを感知したのか、一斉に光りだす街灯。

 冬だなあ、と優菜は思う。下校時間は変わらないが、夏と冬で帰り道の明るさが全く違う。一、二ヶ月前までは、まだ明るかったくらいの時間帯だというのに。

 太陽と比べれば、街灯が照らす範囲など微々たるものだ。優菜の足は自然と速くなる。歩調に合わせて跳ねる、キャラメルブラウンの髪。蝶の形をしたオレンジの髪留め。紺のスカート。学校指定の学生鞄。優菜が街灯の下を通るたびに、LEDの光が彼女にハイライトを入れていく。

 駅から彼女の家であるマンションまでは、徒歩にして十分程度。それなりにいい立地ではあるが、決して大きな駅ではないため、道路の照明は心もとない。一つのデパートを中心に、いくつかのコンビニとファーストフード店が並ぶ駅前を通り抜ければ、何の変哲もない住宅街に出る。優菜が今歩いているのは、マンションと一軒家が立ち並ぶ一角だ。家まであと五分、といったところか。

 家路を急ぐ中、優菜の思考を埋めるのは、昨夜のことだ。ネット掲示板の書き込みに、異常な反応を示したナイトダイバー。彼と、目撃情報を見比べて、優菜は直感した。このままだと彼は、どこか遠くへ行ってしまう。

 だから、部屋から出ていこうとするナイトダイバーを引き留めたのだ。「まだヘリが飛んでるかもしれないから」とまで言って。