Code4:PECHEUR


   コマンドを確認_
   イメージを受理しました_
   システムを構築中***** 完了_
   コンセプト・不可避の弾幕に基づき、コード・マジックを改変します_


 電子音声が告げた直後、ブラッドの意識の片隅でAIによる試行と修正の繰り返しが報告される。

 シミュレーション、エラー。

 再シミュレーション、エラー。

 再々シミュレーション、エラー。

 本来ならば専門の知識を持つ人間が行うべきところを、AIはその単純作業への耐性をもって克服する。秒単位で更新される新しいコード・マジックから意識を反らし、ブラッドはペッシャールとのドッグ・ファイトに集中。

 両者の戦いは、「一発も撃たない空中戦」へと様相を変えていた。共に敵の射線上に入らず、自分の射線上に敵を入れようと動いているのだからそれも当然のことで、特にブラッドがコールガと同調(リンク)してからはその動きが鋭くなっている。

 射線上に敵がいないのに、機銃を撃つことに意味はない。牽制が有効な相手ではなく、そもそも一発の射撃で生じる反動すら、今の状況では命取りになる。進行方向とは逆に向かうエネルギーを生み出すことになる──つまりは減速の原因。一瞬ではあるが、致命的な隙を生み出しかねない危険な行為だ。

 だから、ブラッドはAIの仕事を待ち、ペッシャールの隙を伺い続ける。

 打ち込む一撃のために、相手の精神を削り続ける。

 最適な位置をとるために、コールガの細部にまで意識を裂く。

 意識の片隅で経過を報告し続けるAIの言葉は、定型文を読み上げるような繰り返しに終始していたのだが──