Code3:LEVIATHAN

 発射地点と思しき場所には何もない。ドゥーヴァは、影すら落とさない完璧なステルスを実現しているらしかった。放たれる空中ミサイルは、半分が虚空へ、半分がコールガに向けられる。

 ミサイル迎撃の姿勢で止まっていたコールガを再発進させ、ブラッドはAIにコマンド。

「コード・マジック、発動準備開始!」

 ポップアップするウィンドウには目もくれず、追いすがる追尾ミサイルから逃れようと加速する。


   コマンドを確認_
   これよりコード・マジックの発動シークエンスを開始します_


 電子音声の返答を聞き流しながら、ブラッドは向かってくるミサイルを注視する。

 数は七。追尾機能があるとはいえ、ひとつひとつを人間が操っているわけではないため、先日の三二七の弾幕と比べれば回避はたやすい。

 ぐるり、と上下を反転させるようにして、きりもみ状に急下降。三発を振り切り、さらに急上昇して残りを海に沈める。

 体にかかる圧力はめぐるましく変化していく。ぎしぎしと体が軋む無理な挙動を繰り返してはいるが、ブラッドにとって肉体的な苦痛などどうでもよかった。

 ──いや。どうでもいい、とは少し違う。人間が空を飛んでいる時点で多少の苦痛は味わってしかるべきなのだ、という思想を、ブラッドは持っていた。

 当たり前のことではあるが、人間は自らの力だけで空を飛ぶことはできない。

 本来できないはずのことを、自然の摂理に逆らって行っている。それなりのリスクはあってしかるべきで、その程度ならば受け入れることに文句はない。

 空を自由に飛べる、というリターンさえあれば。

「──は」