Code1:KOLGA
モニタの中で、三角形に近い漆黒の亜音速機が熱線に貫かれる。
鋼鉄すら即座に融解させる高温に、被弾した敵機は大破。それを皮切りに、先行部隊の残り五機が分散して攻撃態勢に入った。
多方向から目に飛びこんでくるマズル・フラッシュに、ブラッドはたまらず操縦桿を倒す。
熱線が左右を通り過ぎていく。ヒレと本体が完全に分離しているコールガは、本体にさえ熱線が当たらなければ戦闘不能に陥ることはない。反重力機構はコックピットのある本体にも搭載されているし、もともとヒレは飛行するための役割を担っていないからだ。
が、しかし。
形勢逆転に必要不可欠なコード・マジックを正常に発動させるためには、たとえヒレの一部分であろうと、たとえそれが飛行に必要ない部位であろうと、一撃の被弾も許されない。
「あと……一分かよ……っ!」
モニタの表示に、青年が呻く。
先行部隊の五機。加えて、後続する本隊が次々と熱線を撃ちだし、視界が赤く染まるほどの弾幕がコールガに襲いかかる。
一対三〇〇の戦いとは思えないほど、余裕も容赦もない猛攻。
それは、シリーズ・エーギル、ひいては『波の乙女計画』に対して敵軍が抱いている恐怖心を如実に表しているとも言えた。
死と隣接した、息も詰まる状況。判断力はそのまま、時間だけが引き延ばされる。迫りくる漆黒の機体と赤い熱線を前にして、瞬間の迷いが生じ──
『右へ』
飛びこんできた声に従い、ブラッドは咄嗟に操縦桿を右に倒した。