第二章

 ヴィオレはしらを切ることを諦め、下着類とパーカー、キュロットスカートを着てカーテンを引いた。白い布で隠れていた御堂がもう一度視界に入る。

 目立ったところなど、ほとんどないような青年だった。細かい作業で邪魔にならないよう短く切られた髪は、通常の──ハイジアではない──人間であることを示す黒色。よれた白衣を気にすることなく着ているのも、浅間の科学者の間では珍しいことではない。

 特徴を探すとしたら、他の学者のほとんどがつけている分厚いレンズの眼鏡をつけていないことくらいだろうか。それだって、外見的特徴としてあげるには弱すぎる。

「それじゃ、座って」

 指示に従い、ヴィオレは簡易ベッドに腰掛けた。御堂はキャスター付きの収納棚を引っ張ってきて、ベッドの脇に置いてあった背もたれのない椅子に座る。

 収納棚に入っているのは、消毒液や包帯などの医療品だ。

 御堂が自分の太腿を二度叩く。ヴィオレが右足をその位置へあげれば、すぐに診察は始まった。

「痛かったら言ってくれ」

 決まり文句を言う御堂だが、遠慮がちに行われる触診は痛いというよりくすぐったい。どちらの方が楽、というものでもないが、少し痛いくらいの方がまだ耐えようがある。

 捻挫だね、と所見を述べた御堂は、患部から目を反らさずに収納棚からテーピング用の包帯を取り出した。必要な可動域を残しながら関節を固定し、上から薄地のサポーターをかぶせる。

「立ってみて、どこかきつくないか?」

 こそばゆさから解放され、ヴィオレは床へ足を下ろした。