第二章 危殆はトラブルと共に

「やかましい。質問に答えなさい。何なの資男」

「なんか生産性がありそうな感じになったけど意味合いで言うならさっきの方がまだ近かったな!」

 すると女性は、

「さっきの方が近かった?」

 と、小首をかしげた。

「それは何? もしかすると、もしもの事、貴方はお客さんだっていうのかしら?」

 事実を確かめるように女性は問う。

「えっと……まあ、そうなる、のか」

 微妙な切り返しになるのも無理はない。

 リッキーはこの店をイアンに紹介されただけであって、必要な物はそこにあるかもしれないと言われただけで、つまるところその他一切については本当、一切触れ込みもなく、合切説明もなかったのだから。

 だからと言ってイアンの名を出してもいいものかと考えると、目の前にいる女性はなんだかイアンとは不仲そうな人間に思える。

 恐らくは口調や仕草といった、ここ数分間で覗える人間性において女性からはイアンと似た匂いがする。

 というかこの女性、一体何者なのか。「いらっしゃい」と言っていたあたり、薬屋で働く従業員か何かだということは分かるのだが、見た感じ年齢二十五、六ほどでリッキーよりも少し大人びた印象を受ける若い女性がこんな陰気な場所にいるというのはなんだか分からない。

 ひょっとすると本当に魔女なのかもしれない。

「痴女ですって? 汚らわしい」

 字面は若干似ているが、よく見ると案外そうでもない。

 というか、

「心の中を読もうとすんな」

 読めてはいないが。

 さて置き。

 事は一刻を争うということを忘れてはいけない。無論、忘れてはいない。