第二章 危殆はトラブルと共に

 マルスが、守ってくれたのだと直感した。こんな姿になってまでもマルスはこちらの身を案じてくれているのだとリッキーは感じた。無知で無力な今の自分では、どうすることもできないという事も。

 力がうまく入らない脚を押さえつけ、近くに落ちていた剣を拾いながらリッキーはマルスの言葉を思い出す。

 世界には、受け入れなければならない事も往々にしてある。

 立ち上がり、駆けながら思う。

 救いたくとも救えない。自分の身を守るという選択しか今のリッキーにはできない。そんな現実に直面して受け入れて、でも折り合いが付けられず、リッキーは叫んだ。

 そして少年は死にかけ、失った。

 だが、失うだけではなかった。

 少年は、間際、死にゆく精霊から指輪を託された。

 同時に、これは失うだけでは済まされなかったというのが正しいのだが、不完全な形で契約の魔法陣を背負う事となったのである。

 それにより何か変調があったといえば、今まで生命活動にまったく関係のなかった魔力が筋力として還元されるようになったという事ぐらいか。

 兎にも角にも、少年は失って、皮肉にも得た。

 これが十二年前に起きた話の末路である。