第一章 トラブルは横暴幼女と共に
「どうぞお手柔らかに。何せアザリアは今、深刻な財政難でして」
「心中お察しします。が、これも仕事ですから。しかし賑わっていますね」
そう言いながらヒューゴーは再び視線を窓の外へ。
街中では、木箱を担いだ者や店先で呼び込みをする者、つるはし片手に砂埃で顔を汚した者など、実に多くの人間が往来している。
「ヒューゴー殿、アザリアは初めてですかな?」
「ええ。ここが山奥だとは信じられませんね」
「物資の搬入ルートは確保は十二分に整えております」
「それならば財政も整え易いでしょうに」
「まあ、色々とございまして……ああ、近くに採掘場もありますゆえ、お時間がありましたら目を通して下さいませ」
「ええ。是非」
「時にヒューゴー殿。今日の視察は二名でと伺っておりましたが……?」
「ああ、これは失礼。部下が遅れているようで。到着までもうしばらくかかるでしょう」
「ははあ、だからどこか上の空だったのですな」
「いやいや、別に心配など微塵もしていませんよ」
ヒューゴーは、「そんな事より」と続け、
「私は、街から漂う違和感が気になって仕方がありませんね」
外に向けていた焦点を今度はクローク姿の男に合わせた。
「私が見たところ、街中にいる子供の数が極端に少ない気がするのですが? 何かありましたか?」
「…………」
返答はない。
目を伏せて口を噤むクローク姿の男を見て、ヒューゴーは追い打ちをかけるかのように言葉を紡ぐ。
「秘匿は犯罪ですよ」
「…………」