〇〇七
「係長の机に従事者登記書が乗っかってましてぐがっ!?」
チョップが届かないので胸ポケットに入っていたペンを投擲。
額に直撃してロニは悶える。
「見るな」
「そうは言いましてもですねぇ、いだだ。見えちゃったもんは仕方ないでしょう」
「まあ、それもそうか」
「不可抗力でさぁ、不可抗力」
「なるほど。それじゃあお前が手足を投げ出しているせいで引っ張り出されたシャツの裾がパーカー諸共更にめくれて腰のあたりが見えてしまっているのも不可抗力だよな?」
「……え?」
「下着(ショーツ)のゴムの部分が見えてしまっているのも、不可抗力だよな?」
沈黙。
ロニが周囲を見渡すと、共同で作業をしていた現場監督と班員一名に凝視されていることに気付いた。
冷静にシャツの裾をズボンに突っ込んでからロニは言った。
「セクハラ、いくない」
ロニの今日の下着の色が黒だと分かっても、作業はそれとは関係なく進む。
昨日の作業で出来てしまったムラは思いのほか少なく、昼休みに入る頃には予定していた工程の三分の二ほどまで作業が終わっていた。
ただし、シルベスタたちの班を除いて、である。
地べたに座って水を飲みながらシルベスタは口を開く。
「監督」
同じく隣で水を飲みながら現場監督。
「あん?」
「なぜ我らの班は今日も四人なのでありますか?」
昨日に引き続き、本日もシルベスタの班は人員不足に見舞われている。
現場監督いわく、本日不在の作業員と連絡が取れないらしい。その作業員の自宅まで行ってみたが扉を叩いても反応がなく、中にいるのかさえも分からないとの事。