第一章 日常茶飯/街の風景
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「あっらららー? あのハゲ頭は、もしかして牧原くぅんじゃないかな? まったく性懲りもなくカツアゲDEATHか?」
ド派手な金髪の男は、口角を僅かに吊り上げながらそんな言葉を吐き出した。
しかもテンポは軽快。声色も少々ふざけた様子。
着用した緑のテーラードジャケットと黒いシャツ、グレーのスラックス。そして顔を装飾する黒縁眼鏡という風貌だけ見れば、極めてインテリで、極めて知的な印象を受けるのだが、瞳孔を広げながら笑う様は不気味の一言に尽きる。
事実、レンズの奥で爛々と輝く青の瞳には、真摯な態度など微塵も感じる余地もなかった。
そこにあるのは、そう。
例えば、子供が新しい玩具を手に入れた時に見せる屈託の無い歓喜であったり。
例えば、誰も知り得ない他人の秘密を握ってしまった時に沸き上がる、言い様のない高揚感に似ていた。
腹の底で煮沸を繰り返す感情。いや、果たして感情と断定して良いのかすら分からないそれをジワリジワリと感じながら、金髪の男は次の言葉を紡ぐ。
「まーきはーらくぅん」
真夜中の喧騒を裂くように、膨大な人流をひらりとかわすように、金髪男の間延びした声は坊主頭の男こと牧原の背中に突き刺さった。
びくりと肩を震わせ、進めていた歩みを止める牧原。
ゆっくりと、ゆっくりと後ろを振り返る彼の表情を見てみれば、まるで何かに怯えたように瞳を揺らしている。しかし、そんな牧原の様子など一切関係ないといった様子で金髪男はマシンガンのように言葉を続ける。