第一章 日常茶飯/街の風景
桐島猛lose_
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アフター*ダーク約款第八条第二節により、所持金が減りました_
チュートリアルを終了します_
ぐったりと横たわる猛。
そんな脆弱な少年には目もくれず、奪った金銭を握り締めながら踵を返して立ち去る坊主頭の男。
こんな状況が人通りの多い駅前で、しかもリアルタイムで繰り広げられていながらも、道行く人々はこの事象に関わろうとはしない。
現実的(リアリティ)とは言い得て妙だ。
――こんな所までリアルなのか……
血か涙か、ぼんやりと霞む視界。
まさか現実(むこう)と同じ気持ちを電脳世界で味わう事になろうとは。ただし、痛みは現実世界のそれより少ない事に猛は気付かなかった。
――ははは……小市民は結局のところ、どの世界でも小市民なのかも。
そんな事を思いながら、ちっぽけな少年は立ち上がろうともせず目をつむる。
人間は五感のどれかを閉じた時、他の感覚が飛躍的に上昇する。視界を閉じた猛の耳はいつもより正確に、且つ膨大な街の風景を捉える。
「――――あっらららー? あのハゲ頭は、もしかして牧原くぅんじゃないかな? まったく性懲りもなくカツアゲDEATHか?」
そして不意に耳に入ったその声も、ザリッと靴底が擦れる音も、やはりただの街の風景だった。
何気なく目を開く猛。
双眸は未だに霞がとれないままだが、その瞳は、グリーンのジャケットとド派手な金髪を見上げる形でしっかりと捉えていた。