第六章

 強い願いを言葉にし、そうして食べることで願いを叶えるリンゴ。

 願いを込める。

 懇願。

 想い。

 それは、口にしなくてもいい事も往々にしてあるわけで、秘めているのが正しい時もある。

 ただ、全てがすべてではない。

 自己完結で終わっていいもの。それとは別で伝えなければいけないこと。見極めは個人個人の考えだから一概にどうこうは言えないが、でも、それでも、想いは何かにぶつけるためにある。

 叶うのが一番幸せなのだけど、吐露して晒して、傷付くことで気付くこともあるのかもしれない。

 幸か不幸か今年の二月は一日多い。

 願わくば、あの姉弟にも閏というか幸せを。そう思いながらベランダで煙草をふかす杏子だった。

 これで二月十四日の物語りは終わり。

 教訓も何もない物語りは、終わりである。