第二章
「茶でも持って来い。全く気が効かんなお前は」
「メイドじゃねえんだよ私はよ」
「レジ打ちも接客もできない上に茶の入れ方も分からないという訳だ。言うにこと欠いて自分の無能ぶりを示さなくてもいいものを。まあ、己を知るというのは大事なことだから否定はしないが自己卑下をするのはどうかと思うぞ。尊厳とかプライドとか、そういうのは大事にするべきだ」
「ワレモノを砕いてくれるのはいつもアンタだよ!」
ざんざん罵られ、ふてくされながら給湯室に向かうも茶筒の中は空で、それを誠に報告すると「買い出しはお前の仕事だろう」ともっともなことを言われた。
薬局・龍心堂における杏子の仕事は主に雑務である。
明確に何をやる、という事は特に決まっていないが、商品の仕入れ・接客・簿記といった店の経営に係る事は店主の誠が。それ以外のことは杏子が受け持っている。
これから茶葉を買いに行こうにも商店街は八百屋と魚屋が準備を開始しているぐらいで、他の店はまだまだ動き出さない。あいにくコンビニも近くにない。よって龍心堂の斜め向かいにある自動販売機で購入。
さすがに缶のまま出す訳にもいかず、苦し紛れに湯呑みに開けて出すに至った。
急ぎ足で店内に戻ると誠と客の声が。
「まずは自己紹介からしておこう。質問は随時受け付ける。俺は龍崎誠。店主だ」
「……私は、浜先かえでです。傘木高校二年です」
「学生証を見たとき知ったが、後輩だったか」
「え……?」
「ああ、俺は……いや俺とそこの馬鹿みたいな顔をした女は傘木高校のOBなんだ」