ハッピーバレンタイン

「ハッッピーーーブァッレンターーーイーーーン!」

 2月14日の放課後、惨劇は始まった。
 
 委員会の仕事があり司書で駄べっていたその時だった。

「あんたらは今日、チョコ貰ったの?」

 委員長の橋本 彩が不意に言った一言で男共のテンションが下がったのを覚えてる。

「チョコ?? なんですかその食べ物はー」

 荒みきった男子共にその発言はアウトだった。

「チョコなんて貰えなくたって? 別に? 悲しくないすぃ」

 その場にいた男子は涙目だった。詳しく言えば悔し涙目だった。

 普段の行いが悪いのか、図書委員男子は誰もチョコをもらえなかった。義理すら無しである。

「そんなことだろうと思った。 義理だけど食べる?」

 委員長が女神に見えた瞬間だった。大きな袋に入った小さなチョコの数々に男子は目を輝かせていた。

 ……このチョコを口に入れるまでは。



 一人目の犠牲者は、主に雑用係の木下君だった。

 配られた星形のチョコを一気に一口で食べる。

「ザックザックしてて市販ではあじうぇ……」

 木下君の最後の言葉だった。

 体がピクピクしながら、机に倒れ込む木下君を見てチョコを食べる手が止まった。

「早く食べて感想聞かせてよ」

 委員長が悪魔に見えた瞬間だった。

 男子が目で会話をしだす。

『おいっ、どうするよ!!!』

『木下はいい奴だった……』

『オレらだけでも生き残るんだ! ……犠牲になった木下のためにも』

 目での会話が終わると同時に走り出していた。校門を出てしまえばこっちのものだが誤算があった。

 委員長の横を通り過ぎないと司書室から出れないのである。

 闇雲に突っ込んでいった、田中に委員長がチョコを差し出す。

 田中は逃げれなかった。

「いい人生だった」

 そう言って田中は白目をむいて倒れていった。

「雪野! ここは任せて先に行け! 駅前のコンビニで落ち合おう」

 小声で荒木はそう言うと委員長に近づいていく。

「美里〜、チョコになにいれたんだよ」

 おどけて話しかける、荒木の額には大粒の汗が流れていた。

「食べてみればわかるよ」

「走れ!」

 荒木の一言を聞いて俺は、一走った。後ろのほうで何かが倒れる音がしたが振り返ることはできなかった。

 階段の踊り場まで走り、後ろを振り返って見る。

 委員長が追いかけてきていた、走ろうとしたが足が絡まりこけてしまう。

「ハッッピーーーヴァッレンターーーイーーーン!」

 その間に近づかれ口の中にチョコを入れられてしまう。

 口の中に入れられたチョコは、甘くて口の中でとけっていった。

「……あれ? 美味しい」

「当たり前じゃん、頑張ったんだから!」



「いつまで倒れてればいいですか荒木先輩」

「リア充が戻ってくるまで」