神刑衰弱

 森の中を少女は走っていた。

 理由は簡単、何かに追われているから。

 赤いスカートの裾を手でたくし上げ森を走る、少女が踏んだ枝がパキッと音鳴らす。先ほど少女が踏んだ枝がまたパキッと音を鳴らす。少女は後ろを振り返ることなく、ただひたすらに森を駆け抜ける。

 少女の裾を掴む手に力が入る。ただひたすらに走る。

 森の出口が見えてくる。森を出れば救われる、街に逃げれば結界がある。一つの望みを胸に少女は走る。



 森を抜けると火の光が少女の目に入る。

 複数の悪魔が街を襲っていた。助かるすべがなくなったことがわかった少女は、その場に座り込んでしまう。後ろからおって来た悪魔は、黒光りした鋭く尖った腕を少女に向かって振り下ろす体勢にはいる。

 何かを突き刺す音が少女の耳に聞こえる。

 固く閉じた目を開けると、目の前の悪魔に一本の槍が突き刺さっている。

 槍を引き抜かれた、悪魔はガラスのように砕け散る。

「な……なんで?」

 神が消えた今の世に、悪魔に対抗する力は徐々に少なくなっているいま、辺境の街を護ってくれる部外者などいない。それが今のこの世の現状だった。

 少女に疑問を投げかけられた男は、槍を持ち直し歩き出す。男が向かう先は悪魔が群がっている街の中。

 人を食い荒らす悪魔の群れに、細い槍を片手に黒いコートをなびかせ街に向かう。

 彼が悪魔を倒すのは己のため、神の罪を祓うため。不死身の身体を返上し死ぬため。

 罪人、オーキンは今日も罪を清算する。