教室

□教室(窓側の一番後ろ)12時

勇人「こえなきゃいけない山場は3つ」

 勇人は校内の見取り図を広げながら、机を囲むようにいる2人を見る。

秋羅「まずは2階に降りる階段だね?」

 秋羅は見取り図の〈3F階段〉と書かれた場所を指す。

要「そこは問題ないな、窓からでて非常階段を下ればいい」

 要は窓を親指で指して、次に進もうと見取り図を見る。

秋羅「まってよ! 非常階段は下ろさないと駄目だよ?」

 秋羅は要の案に驚いたのかずっと要のほうを見ている。

勇人「問題ない、さっきの休み時間中に非常階段を下ろしといた」

 勇人がそう言うと秋羅はなっとくする。

要「あっ、でも下の教室は? 授業中じゃないか?」

勇人「問題ない、下の教室は今の時間は体育だ、次に進むぞ?」

 勇人がそう伝えると3人とも見取り図をみる。

勇人「一番の山場と言ってもいい、二階だ」

秋羅「二年教室の階だからかなぁ」

要「しかも試合のように、ラグビー部の先輩方が廊下を走るから……」

秋羅「隣のクラスの山田なんて、ショルダータックルくらって鎖骨と腕、骨折したらしいぜ?」

勇人「マジか、ようしゃないな」

秋羅「二階は速く走るしかないってことかぁ」

要「転けたら終わりだな」

 3人ともショルダータックルをくらっている自分達を想像し冷や汗を書く。

勇人「さっ最後だな」

 勇人は見取り図の購買部と書かれている場所をさす。

要「購買部目当ての生徒が合流する場所だな……」

秋羅「この前、校長まできてたよ?」

要「人ごみをかき分けて最前列にいくのは辛いよな」

勇人「それは、秋羅にやってもらう」

 勇人は秋羅を信頼してるのか、キッパリと言い放つ。

要「背が小さくてちょこまかしてるからなぁ、秋羅」

秋羅「うっ…… 頑張る!」

 三人の信頼を感じ決意を決める秋羅。

勇人「とりあえず、作戦は以上だ、狙う品は確定ずみ」

要「もちろん、金曜日限定『超DXスペシャルコロッケパン』」

秋羅「この前は匂いを嗅ぐだけだったからね」

 匂いを思いだしているのか3人ともヘラヘラしている。

勇人「じゃぁ! チャイムが鳴ったら決行な!」

先生「今、授業中なのに……」




□二階廊下

 チャイムが鳴った直後に窓から飛び出した三人は、無事に非常階段を降り二階の廊下を爆走中である。

〈教室のドアが開く音〉

 恐る恐る、後ろを振り向く要。

要「うわ、先輩達もでてきたぞ!!」

勇人「思いっきり走れ! このままじゃ引かれる」

 三人の走るスピードがすこし上がる。

要「そこを曲がれば購買だっぬ」

 要は角を曲がろうとしたが、勢い余って転けてしまう。

秋羅・勇人「要!!」

 転んだ要を心配して立ち止まる2人。

 要の後ろにはすごい勢いで走る二年ラグビー部。

要「くっ…… 俺のことはいいから先に行け!」

秋羅「……でっでも!」

要「お前が行かなきゃ! 誰がコロッケパンを買うんだよ!」

 行くのを躊躇する秋羅。

勇人「秋羅! 要の思いを汲み取るんだ!」

 秋羅の肩を叩き、決意を固めさせる勇人。勇人は先に走りだす。

秋羅「……絶対! 絶対! 3つコロッケパン買ってくるから!」

 秋羅はそう言うと購買に向かって一直線に走りだす。

勇人「秋羅! こっちだ!」

 先に人ごみに向かっていた勇人は秋羅が最前列に行きやすいように少し人ごみをかき分けている。

秋羅「ありがとう!」



□購買

 購買部は人ごみにあふれている。

 先ほどまで一緒にいた勇人も人ごみに埋もれてしまっただがなんとか最前列にこれた秋羅は、パンコーナーの『超DXスペシャルコロッケパン』を3つとり購買のおばあちゃんに見せる。

秋羅「これ! 3つ!」

おばあちゃん「3つで900円だよ」



□購買(人ごみが消えた)

 ボロボロになった、勇人と要。

 服のホコリを叩きながら、秋羅に近づく。

要「どうだ買えたか?」

秋羅「…………ごめん財布忘れた」

 罰がわるそうにする秋羅。

 あそこまで頑張って買えなかったことがショックなのか三人とも購買部まえで呆ける。

〈チャイム音〉

 無情にもチャイムがなり、三人の休み時間は終わりを告げた。