壁も地面も白いこの世界。

 唯一白くないのは青い空でもそんな青い空を見上げることはない。

 なぜなら下の世界を眺めるほうが有意義だからだ。

「雷神、今日は日本のキタキンシュウが雨だから雷の準備もよろしく」

「風神いいかげん覚えろよ、キタキンシュウじゃなくて北九州な」

 ワクワクしながら下界を見ていたら人間用語で幼なじみの風神が連絡次項を教えてくれた。

「雷神はまた下界みてんの? ニュンゲンなんてみて楽しい?」

「ニュンゲンじゃなくて人間な、こんな白い世界よりは楽しい」


 雷を落とす時間になり、指定された場所に行くとシヴァさんが大きな声をあげて

「ME・GU・MIのあめぇぇええええ」

 とテンションをフルにして雨を降らしていた。

 確か去年はテンションをあげまくった結果、様々なところで水没の被害をだしていた気がする。

「シヴァさん、今日俺、腹痛いから雷のほうもお願いできる? この玉下界に投げるだけだから」

「ME・GU・M……大丈夫ですか? 雷神くん? わかりましたお姉さんがちゃんと雷神くんの仕事もしときますね」

 シヴァさんに雷の玉を渡すとシヴァさんがものすごい息切れが聞こえてきた。

 興奮じゃなくて疲れだと信じたい。

「雷神、仕事サボっちゃだめじゃ〜ん」

「いいんだよ、どうせ天候なんて神々の遊びみたいなもんなんだから」

 風神にそう言うと自然とため息がでた。

「あんれぇ、肥溜めなんてして雷神悩み事?」

「肥溜めじゃなくてため息な、いやなんか最近俺の仕事に疑問もっちゃって」

「疑問?」

 首を傾げながら風神は体育座りをする。それを立ってみてると風神は自分の右隣の地面を叩いて座るように促してくる。

 指示に従って座ると風神が俺の目をじっと見つめてくる。

「風神とシヴァさん以外の神様と会ったことないけどさ、風神は花の種とかを広める役目があるだろ? シヴァさんは雨を降らして大地を潤すって役目があるだろ?」

「うんあるね、シヴァ姉さんはたまにやりすぎるけど」

「俺の雷を鳴らす意味ってなに!?」

「…………」

 今までじっと、俺の目を見てきた風神が俺から目をそらした。

「「…………」」


 2人の沈黙な時間が続く。

 なんだか気まずくなってしまった。

『風神! 聞こえるか!?』

「なんですか? ゼウス様」

 沈黙の時間をどうしようかと思っていると、風神の首にかけてあるアクセサリーから声が響いてきた。

『日本の雷担当の神はだれだ! 今すぐ変われ』

 風神がちらっとこっちを見てアクセサリーを差し出してくる。

 いかつい声にびびりながらも風神からアクセサリーを受け取る。

「初めまして、日本の雷担当の雷神です」

『お前か! 今すぐ雷を止めろ! 北九州で雷による事故が多発中だ!』

「えっ? ……あっ」

 アクセサリーを風神に投げ渡し、シヴァさんがいた場所に走る。

 その場につくとシヴァさんが

「ME・GU・MIのあめぇぇええええ! ェ〜ンドゥかぁぁあみぃぃなぁぁりぃぃいいい!」

 &の発音にちょっとイラッとしたのは内緒だ。

「ちょっシヴァさん! やりすぎだから! シヴァさん!!」

「あっ雷神くん、お腹の調子は大丈夫ですか?」

 お姉さんスマイルでこちらを見てくるシヴァさんにちょっと引いた。

「雷神くんはいいですよね、私は雨だからあんまり人間にダメージ与えられなくて…… その点雷なら人間なんて一発でぶっ殺ですもん」

「そっかぁ、雷神の役目って人間を殺すことなのかぁ」

 風神がシヴァさんの発言を聞いて納得していた。

 たぶん俺の悩みは日本担当のうちには解決しないだろうと確信した。


   終わり