六、存在意義

 オニキス・ライトの兵装、ランチャーからクラスターミサイルが射出され、空中で分離して連鎖爆発を巻き起こす。

 ──遅い……!

 空が赤に染まる。

 爆発が爆発を塗りつぶし、際限なく肥大化していく。

 ──まだだ……! まだ、上がる!

 その隙間を、爆風と爆風の縫い目を、境目を、蒼衣は飛び続ける。

 左目が得る視覚的情報は、ブラン・エフェメラルの機体に張り巡らされた複数のカメラ・アイから流れてくるデータのおかげで全方位に至る。

 しかし左目。片目だけともなると、視認はできても動きまでの総合判断は必然的に遅れが生じてしまう。右目はもう見えない。右目があったら、と考えてはいけない。これが今の自分だと受け入れろ。そのうえで上回れ。相手を。速度を。全てを。

 ──もっとだ……!

 この程度ではないはずだと蒼衣は歯を食いしばる。

 最速の機体ブラン・エフェメラル。

 まだ体現できてはいない。いなかった。辿り着いていなかった。機体コンセプトに。与えられたその名の、存在意義に。

 次いで殺到するクラスターミサイルの嵐。

 オニキス・ライトの主兵装は銃火器。この程度の物量で底をつくはずがなく、底をつくわけもなく。たしか副兵装のダスターで空気中の塵を集めて弾丸を精製できるから、遠距離戦に持ち込まれては勝ち目はなかった。

 元より、ブラン・エフェメラルの間合いは超近接。翼として稼働しているフォトン翼で相手を切り裂けるまでのレンジに入るしか勝機はない。

 ──もっと、もっと……まだ、足りない!