一、残光

 たまに見かける流れ星は瞬く間に流れ消えてしまうのだが、今日のものは一向に消える気配がない。薄暗い空に光の尾を残し、落ち続けている。しかも心なしかこちらに向かって来ているような気さえする。

 じりじりと後ずさりながら、そんなことは有り得ないと少年は自分に言い聞かせるが、数瞬あとにはそれが間違いだったと認識し、白熱する光の塊が間違いなくこちらに向かって来ていると判断できた時にはもう手遅れだった。

 轟音。

 光の塊が砂に突っ込んだのだ。あわや大激突というところで咄嗟に横に跳んだ少年は、砂まみれになりながら地面を転がった。

 砂を少し吸い込んでしまったらしい。少年は咳き込みながら身体を起こし、墜落した光の塊に視線を向けた。

 傷だらけの菱形流線型の物体。

 全長は五メートル程。

 見た事のない形状だった。

 しかし、乗り物の類だと判断するに難くない。物体の一部がスライドしていてコクピットのようなものが視認できる。併せて、物体と同色の白を纏ったパイロットと思しき人間が近くに横たわっているのが見えた。

 頭部の装備は墜落の衝撃で吹き飛んでしまったのだろうか。綺麗な黒髪の女性だった。

 その女性は、よく似ていた。

 少年が大好きだった姉の顔に、よく似ていた。