一、残光

 夕闇が迫る藍色の空を、白が横切った。

 やや細長い菱形流線型の機体。その機尾から伸びる六枚のフォトン翼で空を弾き、光の尾を残して飛行する。

 爆裂的な速度で空中を駆け抜けるこの機体、〈MADO\frame‐first〉は最強の戦闘兵器である。

 機体は全部で十機。それぞれが個別性能に特化した一点物(ワンオフ)。その速度は風を置き去りにし、内包する火力は単騎にて敵の全てを屠り、正確無比の高速演算にて行動を瞬決する。有するスペックは他の追随を許さない。

 その内の一つ、七番機ブラン・エフェメラル。

 光沢の無い白で埋め尽くされたシリーズ最速の機体は、飛び続けることで自身に与えられた存在意義を体現し、文字通り他の追随を許さない。

 最高速で飛び続けた。

 完全に振り切った。

 追跡できる訳がない。


 ──しかし、それはもう、過去の話だった。


 突如として凄まじい炸裂音が鳴り響き、空に激震が走った。

 虚空より飛来したクラスターミサイルの弾頭が炸裂。撒き散らされた小型の爆弾が破裂。 連鎖爆発で相乗された火力が夕闇を照らし、一部空間が紅蓮で埋め尽くされる。

 ブラン・エフェメラルを照準した爆撃だということは明らかだった。

 だが、爆炎は、白には届かない。高速の七番機はクラスターミサイルの飛来を視認した直後、一瞬のうちに安全圏まで逃れていた。そのままホバリング状態を保持。機体にぐるりと帯状に埋め込まれた複数のナノカメラ・アイで後方の映像を捉える。

 風で薄れていく黒煙。その隙間から覗く深い深い黒。

 視える。

 黒銀が。黒銀の人型機体が。