第3章

 知らず、右腕が持ち上がった。手の内でアンティーク銃が存在感を増す。向けられるべき場所に向けられた銃口が、その喜びをグリップ越しに伝えてくるような気さえした。

 左手に双眼鏡、右手に銃という変則的な構えでありながら、外れる予感が少しもない。

 どころか、周囲に立つ人を巻き込む可能性すら、意識から消え去っている。

 ──復讐を代行するのは、私ではなく弾丸です。

 ──そこに込められた思いが本物であれば、弾丸は望み通りにすべてを代行してくれる。

 ヴァージルの言葉が、脳裏にひらめく。

 引き金にかかった指に、迷いはなかった。

 轟音と、衝撃。火薬の匂いが鼻に刺さる。

 あおられて大きく揺れた視界の中で、グレッグ・ブリューの頭に花が咲くのが見えた。