目が覚めたら

 ドアの前には、当たり前だが知らない人達が立っている。

 髪の色が黒ではない、見慣れない色ばかりだ。

「めっ、目を覚ましたのかい? エル」

 オールバックの厳ついお兄さんが何か言っている。

 エルとは俺のことだろうか、お兄さんが見てる部屋の中には俺しかいないのだから、俺なんだろうが反応ができない。

「身体の調子はいいのかい? 無理しないでベッドに戻りなさい」

 言葉がわかるって事はこの人が喋ってるのは日本語って事なのだろうか?

 とりあえずベッドに戻る。戻るのに少し苦労したがベッドの上に正座してドアの前に立ってる人達を見る。

 みんな驚いた顔をしてる、状況が掴めない。

「ルドルフ、町に行ってカール先生を呼んできてくれ」

「承りました」

 一番歳がいっていそうなお爺さんがキビキビとした動きでどこかに行く。執事という奴だろうか。

「熱も痣もなくなってるわね」

 お爺さんを見ていたら、いつの間にか隣にお姉さんが座っていた。

 長くて綺麗な金髪に整った顔立ち、女神が本当にいるならこんな人なんだろうな。

「それは本当かい? どうして急に…… いや、治っているなら喜ばしいことだよな」

 眼つきが鋭いうえに似合っているオールバックが合間って、眉間に皺を寄せる行為は恐怖の感情しかでてこない。

 街で目があったらなにもしてなくても謝るレベルだ。

「僕らが誰だかわかるかい?」

 目線を合わせてきたお兄さんに少しビクッとする。

「ふふふっ、怖がってますよ貴方」

「うむ…… やっぱり僕は怖いのかな?」

「私達が誰だかわかる?」

 そんなに有名な人達なんだろうか?

 この人達が誰なのかより、女神とヤクザが夫婦なのに驚いてしまう。

「やっぱり、わからないみたいね……」

「しかたないさ、四年も目を覚まさなかったのだから」

 ……衝撃の事実、俺の目を見ながら語る二人を見るに目を覚まさなかったのは俺のことなのは確定だ。

 なんでこうなっているんだ?

 何が俺に起こったんだ?

「私達はあなたの、エルヴィンのお母さんとお父さんですよ」

 その言葉を耳に俺は意識を手放した。