それを証明する相手が同じ学校の、同じ学年の、同性の人間だとすれば効力も格段に上昇するわけで。身内だということで歩み寄りも容易になるわけで。コミュニケーションが取りやすくなるわけで。

 しかし、そんな六呂師の目論見は、パーカーの女の子の言葉で雲散霧消した。

「御所野高校? 人違い、じゃないですか?」

 吐息交じりに女の子は言った。

「だって私──高校は三か月前に中退しています」

 耳を疑った。

 同時に目も疑った。

 六呂師が知る人物の特徴の一つ。すらりとした長身痩躯ということを差し引いても、その顔を忘れるわけがない。ショートワンレングスボブの大人しそうな顔で。血で。血にまみれていて。血の海で軽薄に笑っていたその顔を、見紛うわけがない。

「キミは、当夜坂凜子さんじゃないの?」

 その問いに、パーカーの女の子は心底驚いた様子で答えた。

「……なんで私の名前を知っているんですか。なんですか。何なんですか……!」

 嘘をついている様子は、なかった。

 嘘もなにも、彼女は肯定している。私は当夜坂凜子であると。だが違和感がある。話していて違和感がある。それはまるで、目の前の彼女は当夜坂凜子ではあるがしかし、自分が知る当夜坂凜子とはまったくの別人であるかのような、そんな違和感。

 唐突に、制服上着のポケットに入れたスマートフォンが震える。

 水上からの着信。

 六呂師はすぐさま受話ボタンをタッチして通話に応じた。

『やあ。買い物は終わったかな』

「はい。言われた通りに」