第二章

 放射能汚染を少しでも減らすための策に、ハイジアの人格は考慮されていない。浅間の外へ出る際に身に着けていたものは全て焼却されるし、浅間へ戻るときには体の洗浄が滞りなく行われていることを複数人に監視される。

 ヴィオレにとっては日常。ではあるが、普通の人間の感覚からはかけ離れたものであることくらい、彼女も理解していた。

「除染工程完了。協力に感謝します」

 シャワーが止まると同時、壁面に埋めこまれたスピーカーからオペレーターの声が聞こえてきた。機械音声であると言われても疑問を持てないほど、投げかけられる声は冷たい。

 見られているという意識すら、もはやヴィオレにはない。他人より未発達な体を隠しもせず、用意されていたタオルで体の水分を拭き取り、使い終わったらダストシュートに投げ入れて奥の扉が開くのを待つ。

 押し開いた外扉に対し、内側のそれは横へ、自動で開く。

 明るく照らされた内部は円筒形。十人も入れば窮屈になりそうな広さだが、他に出入り口はない。

 地上部から浅間の最下層まで、長距離を直通で繋ぐエレベーターだ。

 ヴィオレは棚から数少ない荷物を取り出すと、そのままエレベーターに乗り込んだ。

 人の出入りを感知すると、エレベーターの扉が自動で閉まり、移動を開始する。内臓を持ち上げられるような感覚。景色はなにも変わらないものの、ヴィオレを乗せた鉄の箱は確実に降下していた。

 数十秒ほど不快感を耐えると、浅間の下層に到着して扉が開く。今まで狭苦しい空間が続いたが、ようやく広い場所に出た。