第二章 危殆はトラブルと共に

「ま、使いすぎは体に毒ではあるけれどね。魔薬(エリクシル)って劇薬だから」

「マジかよ」

「用法容量を守らないと死ぬわ。嘘だけど」

「嘘かよ」

「そうね、半分本当」

「おい」

「これは一種のドーピングみたいなものと思って」

 と、女性は説明を続ける。

 曰く、あくまでも弱った項目を補強するための薬との事。連続で使用する事による重複効果は得られないらしい。ただ、劇薬というのは間違いないようで、仮に複数個使用した時に訪れる反動についてはあえて説明を伏せられた(悪意しか感じない)。

「考えてみりゃそうだよな。そんなおいしい話、リスク無しって方が嘘臭え」

「目には目を歯には歯を。毒には毒という事よ。薬は毒と同義」

 そんな妙薬を目の前に、リッキーの心は少なからず浮き足立っていた。

 これで幼女の魔力は少量であろうと確保できるのだと。同時、違う可能性も見え始めてきている事にもリッキーは気付いていた。

 まず、この魔薬(エリクシル)を求めるにあたってリッキーが奔走している理由というのは、幼女を助けたいがための事であり、それに起因する出来事として幼女の魔力切れが根底にある。

 幼女の事情を思い出して欲しい。

 幼女クルスティアン・ポポリオーネことティアは、魔力供給の方法を持たないがため、唯一の手段である精霊契約に踏み切ろうとリッキーの下を訪れているようである。

 では、なぜ幼女は魔力供給の方法を持っていないのか。

 それに関してイアンは言っていた。魔力穴が閉じているように思えると。

 魔力穴とは、精霊が空気中から魔力を吸収するために欠かせない毛穴のようなものである。

 精霊の体にはその魔力穴が無数に存在し、生命活動に必要な魔力はそこから補えるようになっているのが普通だ。