第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 がら空きの腹部は眼中にない。狙っているのは新たに顕現された弱点。起爆能力のないただの的。リッキーはそこを目掛け、腰の回転で全力の右拳を放った。

 ズドン、と鈍い衝撃音が響き渡り、白骨化した右脚が吹き飛ぶ。

 その直後、絶大な悲鳴が空気を揺らす。

 鳴いたのは巨大骸骨の方だった。

 巨大骸骨は平衡感覚を失い、たたらを踏んで膝から落ちる。

 膝から下を失ったことにより高さが半減。それにより、もう一つの弱点である顎門(あぎと)をリッキーの眼前に差し出していた。

 骸骨の腕には決して攻撃しない。爆発するのは腕だけだ。

 それは、地についている脚を鑑みればすぐにわかる。だからといって頭が爆発しないかと言えば首を縦に振ることはできない。しかし、今なら言い切れる。

 頭部に触れても爆発は起きない。

 何故なら、頭部に触れると起爆するのならば、ティアが剣で貫いた時、その時に爆ぜていなくてはならなかったのだから。

 繰り返す。

 頭部に触れても爆発は起きない。

 リッキーは、もう一撃の大砲、左腕を振り上げ──ゴシャアアン!! と轟音が木霊すると同時、白の頭部が跳ね上がった。

 アッパーカット気味に繰り出した拳が巨大骸骨の顎門を真芯で捉え、粉砕した。もしも骸骨に明確な感情があったとすれば、驚嘆せずにはいられない。

 二発。

 たったの二発で屠られてしまったのだ。

「カルシウムが足りねえよバカヤロー」

 砕けた頭蓋が白の粉となって飛散し始める。

 全ての力をたった二撃で刈り取られた骸骨は、そのまま力なく地面に突っ伏し、数秒して風に攫われ、いつの間にか漂っていた無数の羽根と共に空へと舞い上がった。