第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 見える景色は、人のバリケードでさながら通行止めの状態だった。

 ──違う道に逸れて、いや、それじゃあ駄目だ!

 もしも狭い裏通りに入ったとして、また間合いを詰められたら、怪我を負った幼女がまた上手く援護してくれるとは限らない。

 冷静になれ! とリッキーは心の中で喝を入れる。脚は止めずに全力で踏み出しながら、髪を振り乱しながら。

 思い返してみれば、あの骸骨たちにはおかしな点が多々ある。

 その一つとして骸骨たちは周りの人間には一瞥もくれず、尚且つこちら側だけ正確に狙って飛び込んできていた。

 湧き上がる違和感。

 もしかするとあの骸骨たちの全ては、こちら二人のみに絞られているのではなかろうか、という疑念がリッキーの脳裏を過ぎる。

 ──そうだ! 何かおかしい。

 目の前の人流が邪魔ならば、避ける必要なんて初めから無い。

 ──爆発する手で触りゃあ、障害は吹き飛ぶんだ。

 そう。立ちはだかる壁は、掌で撫でるだけで爆発する。

 そうやって障害を潰した方がロスが少ない。

 一つ、仮説がある。

 もしもあの骸骨たちが精霊だとすれば自己判断で行動を瞬結しているはずだ。こちらを認識して追跡し続けているあたり、知能めいたモノも感じなくはない。

 だが、この骸骨が初めから決められた動きしかできなかったとしたら。例えば命令に従うだけの、それこそ糸で操る事ができる傀儡のようなものであったとしたら──

 むくり、と。脇に抱えた幼女の首が上がる。

「! 目ぇ覚めたかバカ精霊!」

 幼女はゆっくりとリッキーへ顔を向けて答える。

「ティ、ア……だよ」