第一章 トラブルは横暴幼女と共に

 そんな理由で、非公認ではあるが専属のストッパー的な位置付けをされ、事あるごとに持ち場である南門から呼び出されることもしばしば。だが身体の線は細く、とてもじゃないが男二人を制する腕力を擁しているようには見えない。

 一部で熱烈なファンクラブがあるという噂もあるが、それはまた別の話。

 それにしても鋼の拳でげんこつは、さすがのリッキーでも痛い。軽く頭をさすって状態を確認してみたが、骨に異常はなさそうだ。

「ったくよーガンガンガンガン殴りやがってよー。お前は俺のかーちゃんですか?」

「はい黙る。はい反省。アンタね、いい大人が恥ずかしくないの? 朝からケンカケンカケンカケンカ……これで何回目?」

 ため息交じりに問うアイリーンに対し、リッキーは、

「大人なんて、常識という名の皮を被った子ど」

 子供なんだよと言いかけた瞬間、ガン! と打撃音。リッキーの頭が再び悲鳴をあげる。

 今度は当たり所が悪かったらしく、目じりにうっすら涙が浮かんでいた。

「屁理屈言うな!」

「〜〜〜〜〜!」

「ったく……どんだけ掛かると思ってんのよ街の修繕費。ホント困った」

「お前さあ、殴る時もうちょい加減したらどうなのコレねえ!? 血ィ出てない? 絶対血ィ出てるって!」

「ちょうどいいじゃない。アンタは血の気が多すぎんの」

 血抜きで鎮静化なんてできるものか。鉄拳で殴られるこちらの身にもなってみろとリッキーは言いかけたが、どうせまた殴られるのだろうと予知し、口を噤んだ。

 しかしながら、なぜ門番のアイリーンが持ち場から離れているのか。街の住人が呼んだにしても到着が早すぎる。