〇一〇

 メイソン・ジョーンズいわく、自分ができるのは山羊に変えることだけで元に戻す事はできない。元に戻れるのは自分だけで他人は無理。ということだった。自分勝手なあの男らしいといえばそれまでだが、最後まで腹立たしいやつだとロニは憤慨する。

「まあまあ、捨てる神あれば拾う神あり〜パンは捨てるな拾って食うなってね」

「係長、それちょっと分かんないっす」

「あれぇ……」

 山羊になってしまった二人のこの先のことはきちんと決まっていないが、軍部で保護するようロニが話しを進めている最中である。

 しかし落胆はしていない。

 変化されられる者がいればその逆で、元に戻すことができる者もいる可能性はある。

「まあ、僕もそういう人間を必要としていますからなぁ」

「ねえ、前から思ってたんだけど、なんでロニ君は自分のこと僕って言うの」

「え? 僕は僕なんて言ってませんけど」

「え〜言ってるじゃない」

「言ってねえから」

「はひっ」

 電波な報告書が中央図書館に格納されるのは約二日後。

 中央図書館という単語でロニは何かシルベスタから頼まれていたようなことをおぼろげに思い出したが、大した内容ではないのだろうと考えるのをやめた。

 その後のロニの上司と知り合いの司書の進退は、定かではない。