〇〇八

 失踪者の血液型。バーミッドグロウ塗装。グランツハウス。ホームタイム・インク。失踪者の中には経営者もいた。競合他社。もともと軍部からの監督者は一名派遣で作業には携わっていない。しかし現在は監視と作業が業務内容となっている。失踪者が出た夜には動物の鳴き声。牛の様な。これは自然現象ではない人為的な悪意である。一体誰が──「この辺は山羊が住んでてよ」「山羊?」「ああ。バフォメールっつう牛みてえな鳴き声のやつで、壁を舐めに来るのさ」。

「────っ!」

 フラッシュバックする映像の中、急激に現実に引き戻されるような感覚がロニを襲う。

 いつの間に手放してしまったのかテーブルの上でくたりと横たわる社員名簿。窓から吹き込んでくる風で項がはらはらとめくれ、無造作にページが開かれる。

 そこに記されているのは夫人の社員記録。

 ロニはそれを見た瞬間、全身に汗がぶわりと噴き出すのを感じた。

 加速する心拍を抑えることができない。夫人の血液型が失踪者のものと同一のそれだったのだから。

 直後には、ロニは事務所の扉を蹴破って外に飛び出していた。

 階段を飛び降り、力任せに着地してそのまま裏通り二本を駆け抜ける。

 ──間に合え! 間に合え!

 疾走しながらロニは考える。

 なぜ作業終了からそれほど時間が経っていないのに現場監督は事務所に戻っていない?

 一階の倉庫に今日使用した作業道具が運び込まれていないのは何故だ?

 道具をしまうより先に済ませなければならない用事でもあるのか?

 あるとすればそれは何か?

 様子を確認する?

 何の? 誰の?