〇〇四

「まあまあ。でもほら、警務部の記録には音のことなんて書かれていないワケじゃない。音のことはロニ君が聞き込みをしたから分かったんだよ?」

「それも……そうですねぇ」

「だったら、聞き込みを続ければまた新しい証言があるかもしれない」

「確かに」

「下手なパン屋は修業あるのみ」

「係長、それちょっとよく分かんないっす」

「あれぇ……」

 とりあえずは継続。

 まだまだ捜査の余地有り、ということでロニの報告は終わった。

 続くシルベスタの報告は、ロニの話を聞いていたと言う事もあって書類の作成に少々かかり、ややあっての提出となった。

「遅くなりました。申し訳ありません」

「いや全然早いよ」

「そうですか?」

「うん。こないだの壁塗りの報告書なんてロニ君、一週間も出さなかったもん」

「そういうことでしたら訂正します。そこの馬鹿より仕事が早くて申し訳ありません」

 少し離れたデスクから「シャラップ!」と声が飛んで来たが、シルベスタは聞こえていない事にした。メンチを切るロニと目が合いもしたが、なかったことにした。

「では係長、報告いたします」

「張り切ってどうぞ」

 報告。

 総務部庶務七課・多面担当シルベスタ・ガフ、同所属ロニ・ヴァルフォアが就いた外壁補強の任においての活動状況を報告する。

 施工会社、ジョーンズ工務店。

 作業は三日間を予定。

 モルタルの舗装作業を一日目に。二日目にムラが出た部分を再度舗装。三日目にカラサリス由来の液体の吹き付け。

 総作業員数二十五人。

 壁に塗装するモルタルの材料は指定の物を使用しており、適性と思われる。